二度と見られない刀【三日月兼光】を鑑賞しました。見どころと感想をレポ
“三日月”と聞くと天下五剣の三日月宗近を思い出す人は少なくないのではないでしょうか。
しかし今回ご紹介するのは帰国子女の“三日月”です!
佐野美術館に展示されていた中で特別展示と打ち出された刀。
私も知らなかったのですが、ミュージアムショップに売られていたパンフレットが目にとまりこの刀を知りました。(おそらくこのパンフレットに気づかなかったら展示もあまり見ずに通り過ぎていたと思います・・・)
上杉景勝が書き記した名物刀剣の目録にも名前が挙がっている名刀のようです。
↓三日月兼光の見た目はこんな感じ*2
太刀 銘 備前長船兼光 (名物:三日月兼光)
延文五年六月日
南北朝時代(1360年)
刃長 80.6cm 反り3.0cm 個人蔵
刃取りののたれが美しいですね。刃文も刃取り通りの”のたれ”です。
「海の波のような素直な乱れ刃は江戸時代に好まれた」という情報により三日月兼光も私の中では「江戸時代っぽいな~」という印象でした。
南北朝の刀と知っていてなおそう感じるのは豪華な彫物のためでもあるでしょう。彫物の題材は三鈷剣に倶梨伽羅龍。刀では定番の題材が見事に彫り込まれています。
もう一つ江戸っぽさを感じたのは一点の曇りもない澄んだ刀身です。個人蔵とは思えないほどに美しい状態が保たれていました。茎の傷みも少なくて美術館の解説員さんも「本当に大切によく手入れされている」と評しておられました!
写真には写っていないですがのたれの合間、棟側にところどころ小さな飛び焼きが入っています。中央の飛び焼きが三日月型に見えることから「三日月兼光」と名がついたそうです。
↑こんなイメージです。絵心なくてすみません><
販売されているパンフレットにはもっと三日月らしい形の湯走りがはっきり写っているのですが、肉眼ではこのように見えます 「三日・・・月?」
まぁ、分からなくもないかなという印象です。パンフレットでは確かに三日月なんですけどねw
この三日月部分、私には飛び焼きに見えましたがこれは「湯走り」と呼ぶようです。解説員さんによると「湯走り」も「打ちのけ」も「飛び焼き」も本来は同じものを指していて、形の出方によって呼称が変わるのだとか。この三日月兼光にしても「湯走りだ」という人もいれば「飛び焼きだ」と見る人もいて、刃文とくっついているかいないかの瀬戸際のような文様みたいです。
私の鑑定眼が間違ってはいなかったようでちょっとホッとしました(笑)
棟や重ねについてはチェックし忘れてしまいました・・・
パンフやネットにも情報が見つからず無念です。今後鑑賞するときは忘れないようにしないといけませんね。
全体的に美術刀としての完成度が高い三日月兼光。所有者の帰国とともにアメリカに行ってしまうようで日本ではもう見られないのではないでしょうか。
是非ともまた日本に遊びに来て欲しい一振りです!